2017年東京都議会議員選挙のポイントを選挙コンサル特定行政書士が解説します

127人を選ぶ選挙

東京都議会議員選挙は1362万人の東京都民を代表する議員を127人選ぶ選挙です。都議会議員の任期は4年。

他の都道府県議員も東京都議会議員と同様に任期が4年で、大多数の都道府県では同じタイミングで選挙が実施されます。これを「統一地方選挙」と呼びます。東京都議会議員選挙はなぜタイミングがずれているのでしょうか。

都議会は解散したことがある

実は、東京都議会は過去に解散したことがあるのです(昭和40年)。そのため、それ以前は他の都道府県と同様に4月下旬に選挙が実施されていましたが、昭和40年以降は2年遅れの6月下旬から7月上旬に単独で実施されることになりました。

選挙権と被選挙権

東京都議会議員選挙の選挙権は、満18歳以上の日本国民で、かつ東京都内に引き続き3ヶ月以上住所を有する男女です。昨年までは有権者年齢は満20歳でしたが、公職選挙法の改正により満18歳に引き下げられました。今回の東京都議会議員選挙は、都議選としては初めて満18歳と満19歳も選挙権を得る選挙となります。日本国籍を有しない者(外国人)は、たとえ永住権を持っていても選挙権はありません。

東京都議会議員選挙の被選挙権(立候補する権利)を有する者は、上記の選挙権を有する者のうち満25歳以上のものです。ちなみに、東京都内に住所を有すれば(東京都議会議員選挙の選挙権があれば)、都内のどこに住所があっても都内のどこからでも立候補可能です。

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選挙の方式

東京都内には、23の特別区・26の市・5の町・8の村が存在します。東京都議会議員選挙では、これらの自治体を42の選挙区に分けています。各選挙区から選出される議員数は場所によって異なり、当該選挙区の人口に応じて「1人」から「8人」まで議席が振り分けられています。

衆議院議員総選挙のように1人の当選者を選ぶ選挙区制度を「小選挙区制」と呼び、複数人の当選者を選ぶ選挙区制度を「大選挙区制」といいます。この小選挙区制度と大選挙区制度は各々メリットとデメリットがあり、選挙の種類によって使い分けるのが一般的です。

しかし、東京都議会議員選挙では、この小選挙区制と大選挙区制を混在させている選挙方式となっています。なお、国政選挙でも問題になっている「一票の格差」は東京都議会議員選挙でも存在し、その「一票の格差」を解消するために選挙区定数の変更が一部実施されました。この区割変更によっても一票の格差は是正されておらず、引き続き一票の格差解消に向けた取り組みが求められています。

大選挙区制と小選挙区制

衆議院議員総選挙で選挙制度改革が実施された際に、大選挙区制(中選挙区制)のデメリットを解消するためと言われました。すなわち、大選挙区制の下で選挙を実施すると、大きな政党は複数の候補者を立て、場合によっては同一選挙区から同一政党の議員が複数誕生します。同じ政党同士でライバルとして選挙を戦うので、同一政党内でも利害が対立するグループが生まれ、選挙戦が激しくなると共に選挙にかかる費用が増大すると言われています。

そのような大選挙区制(中選挙区制)のデメリットを解消するために衆議院議員総選挙では小選挙区制が導入されましたが、この小選挙区制にもデメリットがあります。すなわち、候補者の中でトップを獲得しないと当選できないので、集票力のある大政党に有利になり小政党の候補者は当選の可能性が限りなくゼロになってしまいます。衆議院議員総選挙では、このような小選挙区制のデメリットを解消するために比例代表制度と併立制にしました。しかし、東京都議会議員選挙では比例代表制度を取り入れていません。したがって、東京都議会議員選挙の1人区では大政党が極めて有利になります。

立候補するには供託金が必要

東京都議会議員選挙の立候補者は、立候補の際に60万円を「供託」しなければなりません。この供託金は、当該候補者の得票数が「供託金没収点」に達した場合には全額返還されます。しかし、当該候補者の得票数が「供託金没収点」に達しない場合や、途中で立候補を取りやめた場合には供託金全額が没収されてしまいます。

さらに、得票数が供託金没収点に達しない候補者は供託金が没収されるだけではなく、公費からの補助も受けられません。すなわち、一般的には選挙運動用自動車のレンタル費用や運転手の報酬・ポスター等の印刷費用は選挙管理委員会から公費負担が受けられます。しかしながら、得票数が「供託金没収点」に達しない候補者は、上記のような公費負担を受けられなくなってしまいます。

預けたお金が戻ってこないばかりか、補助を受けられず自己負担になってしまうという、まさに踏んだり蹴ったりの状況に陥ります。

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今回の都議選から定数が変更

一票の格差を解消するため、今回の東京都議会議員選挙から4選挙区において「2増2減」の定数変更が行われます。

町田市選挙区が定数3→定数4に変更され、北多摩第三選挙区も定数2→定数3と各選挙区で1議席ずつ増えます。一方で、中野区選挙区では定数4→定数3に変更され、北区選挙区も定数4→定数3へと書く選挙区で1議席ずつ減ります。

上記選挙区のうち、中野区選挙区では「川井しげお」議員が立候補予定です。川井議員は、小池東京都知事が当選した当時の都議会議長でしたが、小池東京都知事が議長を表敬訪問した際に小池東京都知事からの握手を拒否して小池東京都知事に喧嘩を売ったことで、都民から大きな反感を買いました。都民の支持を得て都知事に就任した小池氏に面と向かって暴言を吐くような議員に対して、中野区民がどのようは審判を下すのか注目されます。

また、中野区と同様に定数が削減された北区からは、小池東京都知事を支持する都議会会派である「都民ファーストの会東京都議団」の「おときた駿」議員が選出されています。前回2013年の東京都議会議員選挙では、北区選挙区で1位当選だった高木けい議員(自民党)の33,918票に対して、おときた駿議員の得票数は半分以下の13,296票であり4位で最下位当選でした。今回から定数が1議席減るため、おときた駿議員の苦戦が予想されていましたが、小池東京都知事の支持を得て票を伸ばすと見られており、混線が予想されます。

東京都議会議員選挙の投票率はどうなるか?

前回の東京都議会議員選挙は2013年6月23日に実施され、投票率は43.50%でした。前回は同年7月20日に実施された参議院選挙の直前だったため、参議院選挙の前哨戦とも見られていましたが、結果としては史上2番めに低い投票率でした。日本維新の会が多数の候補者を擁立しましたが、前回の都議会議員選挙ではほぼ全滅だったことも注目されました。

今回の東京都議会議員選挙では投票率が回復することを期待したいです。