「選挙に出るにはいくらかかるのか?」は、立候補を検討するすべての方が抱く疑問です。「数百万円から数千万円かかる」という話を耳にしたことがあるかもしれませんが、実際には選挙の種類・地域・戦略によって大きく異なります。
また、日本には「選挙公費負担制度」があり、適切に手続きを行えば選挙カーやポスターなど主要な費用を公費で賄うことが可能です。一方で、公費負担申請を誤ったり、運動員への報酬支払いを間違えたりすると、重大な選挙違反に問われるリスクがあります。
このページでは、選挙費用の全体像を「①必ず発生する費用(供託金)」「②公費で賄える費用」「③自己負担となる費用」の3つに整理して解説します。
この記事でわかること
- 選挙費用の全体像と3つの分類
- 供託金の金額(選挙種別一覧)と没収される条件
- 選挙公費負担制度で補助される費用の詳細
- 自己負担が必要な費用の具体例
- 運動員への報酬支払いで起きやすい選挙違反(差額買収)
- 立候補手続きの専門サポートについて
選挙費用の全体像
選挙にかかる費用は、大きく3つに分類できます。
| 分類 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| ① 供託金 | 法務局に預ける現金または国債 | 一定得票で返還、未達なら没収 |
| ② 公費負担費用 | 選挙カー・ポスター・葉書など | 選挙管理委員会が業者に直接支払い |
| ③ 自己負担費用 | 事務所費・印刷物・人件費ほか | 選挙運動費用の上限内で管理 |
公費負担を受けるためには、あらかじめまたは選挙後に正確な手続書面を作成・提出する必要があります。この書面作成は行政書士の独占業務であり、無資格者が代行した場合は行政書士法違反となります。
供託金(立候補に必ず必要な費用)
すべての選挙において、立候補届出の際に「供託」の手続が必要です。供託とは、法務局に一定額の現金または国債証書を預け、その証明書を提出する手続です(公職選挙法第92条第1項)。なお、町村議会議員選挙については、令和2年(2020年)の公職選挙法改正により供託金制度が導入され、供託金額は15万円とされています(令和2年12月12日施行)。
供託制度の目的
供託制度は、当選を争う意思がない人が売名等の目的で無責任に立候補することを防ぐために設けられています。一定得票数(供託物没収点)を下回った場合は供託金が没収されます。
供託金額一覧
| 選挙の種類 | 供託金額 | 没収点 |
|---|---|---|
| 衆議院議員選挙(小選挙区) | 300万円 | 有効投票数の1/10 |
| 衆議院議員選挙(比例代表) | 600万円 | - |
| 参議院議員選挙(選挙区) | 300万円 | 有効投票数の1/8 |
| 参議院議員選挙(比例代表) | 600万円 | - |
| 都道府県知事選挙 | 300万円 | 有効投票数の1/10 |
| 都道府県議会議員選挙 | 60万円 | 有効投票数の1/10 |
| 市長選挙・特別区長選挙 | 100万円 | 有効投票数の1/10 |
| 市議会議員選挙・特別区議会議員選挙 | 30万円 | 有効投票数の1/10 |
| 町村長選挙 | 50万円 | 有効投票数の1/10 |
| 町村議会議員選挙 | 15万円 | 有効投票数の1/10 |
※ 衆議院小選挙区と比例代表の重複立候補者の場合、比例代表の供託額は300万円となります。
供託手続きの注意点
市議会・区議会議員選挙では告示日が日曜日となることが多いですが、法務局(供託所)は土・日・祝日が閉庁日です。
日曜告示の場合、供託は必ず前週金曜日の執務時間内(通常17時まで)に完了させてください。金曜日に忘れると立候補そのものができなくなります。
日曜告示の場合、供託は必ず前週金曜日の執務時間内(通常17時まで)に完了させてください。金曜日に忘れると立候補そのものができなくなります。
供託手続きの詳細や注意点については、立候補手続きの専門サイトで解説しています。
選挙公費負担制度(公費で賄える費用)
「選挙公費負担制度」とは、立候補者の経済的負担を軽減し、資産の多寡にかかわらず立候補の機会を確保するための制度です。公職選挙法で認められている一定の選挙運動費用について、所定の限度額まで候補者に代わって公費で支払われます。
公費負担の対象となる費用(市議選の場合)
| 費用項目 | 公費負担の内容 | 上限額(市議選の例) |
|---|---|---|
| 選挙カーレンタル | 期間中の車両借上げ費用 | 1日15,800円 |
| 運転手報酬 | 選挙カー運転手への報酬 | 1日12,500円 |
| 燃料費(ガソリン代) | 選挙カーの燃料費 | 1日3,350円 |
| 選挙ポスター作成費 | 掲示板貼付用ポスター | 枚数×単価で算定 |
| 選挙はがきの郵送費 | 法定枚数内の葉書配送 | 法定枚数内で全額 |
| 選挙ビラ作成費 | 首長選挙のみ対象 | 首長選挙のみ |
国政選挙(衆議院議員・参議院議員選挙)では公費負担の対象がさらに拡大されます
上記の表は地方選挙を前提とした公費負担項目です。国政選挙ではこれらに加え、以下の費用も公費負担の対象となります(金額等は衆議院総選挙の例)。
- 選挙事務所の立札・看板作成費(公職選挙法第143条)― 61,379円×作成数(3枚以内、合計上限184,137円)
- 選挙運動用自動車等の立札・看板作成費(公職選挙法第143条)― 58,114円×作成数(4枚以内、合計上限232,456円)
- 個人演説会場用立札・看板作成費(公職選挙法第143条)― 44,403円×作成数(5枚以内、合計上限222,015円)
- 選挙運動用通常葉書の作成費(公職選挙法第142条)― 8円62銭×作成枚数(35,000枚以内、合計上限301,700円)※郵送費は地方選挙も含め公費負担対象
- 新聞広告費(公職選挙法第149条)― 指定新聞への選挙運動広告を所定回数まで公費負担(回数・金額は選挙の種別・選挙区ごとに異なる)
- 政見放送(公職選挙法第150条)― NHK・民放でのテレビ/ラジオ政見放送が無料で実施
- 経歴放送(参議院比例代表選挙のみ・公職選挙法第150条の2)― 候補者の経歴紹介を放送で実施
公費負担制度利用の重要な前提条件
公費負担は「供託物没収点以上の得票」が条件です。没収点を下回る得票しか得られなかった場合、ポスター代・選挙カー代など選挙運動にかかった費用はすべて候補者の自己負担となります。
また、公費負担を受けるためには、事前に印刷業者・レンタカー業者・ガソリンスタンド業者・運転手などとの契約書面を作成し、選挙管理委員会に提出する必要があります。
公費負担手続に関する書面は、官公署(選挙管理委員会)に提出する書類であり、その作成は行政書士の独占業務です(行政書士法第1条の2)。無資格の選挙コンサル業者に依頼すると行政書士法違反となるため、必ず特定行政書士に依頼してください。
自己負担となる主な費用
公費負担でカバーされない費用は、すべて候補者の自己負担となります。主な費用項目は以下のとおりです。
- 選挙事務所の賃借料・光熱費
- 電話・インターネット回線費用
- 選挙運動員(ウグイス嬢・選挙カラス)への法定報酬
- 法定数を超える印刷物(※公費対象外分)
- ウェブサイト・SNS管理費用(広告費は原則禁止)
- 事務用品・消耗品費
- 選挙コンサルティング費用・行政書士への委託費
選挙運動費用の法定上限
選挙では、使用できる費用の総額に上限(法定選挙運動費用)が設けられています。上限額は選挙の種類・選挙人名簿登録者数によって異なり、有権者数×人数割額+固定額で算出されます。上限を超えた支出は公職選挙法違反となります。
具体的な選挙ごとの上限額については、各選挙管理委員会に確認するか、選挙コンサル特定行政書士にご相談ください。
選挙費用関連の選挙違反リスク
費用に関連して最も多い選挙違反が「差額買収」です。運動員や選挙カーの運転手などに、法定限度額を超える報酬を支払ったり、事前に約束したりすることで成立します(公職選挙法第221条)。
法定限度額を超える報酬の支払いは選挙違反
法定の限度額以上の報酬を約束した時点で選挙違反(事前収賄)が成立します。「後払いするつもりだった」「約束しただけで実際には払っていない」は言い訳になりません。
選挙後に差額買収で逮捕・起訴される事例は後を絶ちません。「今まで問題なかった」「他の候補者もやっている」という感覚に頼ることは非常に危険です。
よくある違反パターン
- ウグイス嬢・運転手への日当を法定額(ウグイス嬢は1日20,000円等)超えて支払い
- 電話作戦のアルバイトへの報酬支払い(選挙運動員買収)
- 選挙コンサルティング会社への「選挙運動」委託報酬の支払い
- 飲食物の提供(法定範囲を超えた場合)
選挙違反のリスク管理については、専門の特定行政書士選挙コンサルタントへのご相談をお勧めします。
立候補手続き・選挙公費負担手続きの専門サポート
選挙に立候補するためには、費用の準備と並行して、供託手続き・立候補届出書類の作成・選挙公費負担申請など多岐にわたる手続きを正確に行う必要があります。
これらの手続きを誤ると、立候補そのものができなくなるリスクがあります。特に書類の記載ミスや必要書類の不備により届出が受け付けられず、立候補を断念せざるを得なかった事例も複数報告されています。
立候補手続きの専門サイト「立候補届出.net」では、手続きの流れ・供託・書類作成・予備審査まで、実務に基づいて詳しく解説しています。
まとめ:選挙費用は事前の計画と専門家への相談がカギ
選挙費用は選挙の種類・地域・戦略によって大きく異なりますが、以下の3点を押さえることが重要です。
- 供託金は立候補の絶対条件。手続き場所・期限に注意する
- 公費負担制度を最大限に活用し、自己負担を最小化する
- 運動員報酬は法定上限を厳守し、差額買収リスクを排除する
限られた予算で最大の効果を出すための費用戦略のご相談は、選挙法務専門の特定行政書士にお任せください。地域特性・選挙種別に応じた最適なコスト配分をコンサルティングいたします。
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