この記事でわかること
- 政治活動と選挙運動の基本的な違い
- 任期満了6か月前から禁止される個人ポスターの規制(公選法第143条)
- 選挙期間中に政党・政治団体に課される11種類の政治活動規制(第201条の6〜9(選挙種別により異なる)〜14)
- 確認団体のみ認められる政治活動とその条件
- 選挙が重なるケース(突発的な解散総選挙・補選等)での注意点
選挙運動と政治活動の違いは?
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が政治活動と言われています。
ですから、広い意味では選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のように解釈できます。
【選挙運動】
判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。
【政治活動】
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたものをいいます。
| 選挙運動 | 政治活動 | |
|---|---|---|
| 定義 | 特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接・間接に必要かつ有利な行為(判例) | 政治上の目的をもって行われる一切の活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの |
| 期間 | 立候補届出日〜投票日前日のみ | 通年実施可能(一部期間で制限あり) |
| 規制の性質 | 認められたもの以外はすべて禁止 | 原則自由。ただし選挙期間中は一部制限 |
選挙運動と政治活動についての詳しい解説は、候補者が絶対に理解すべき政治活動と選挙運動の違いをご確認ください。
任期満了6か月前から禁止される政治活動(個人ポスター規制)
政治活動用ポスターは通常、後援会活動等として通年掲示が認められています。しかし、選挙が近づくと候補者個人に関連するポスターには掲示禁止期間が設けられます。
| 期間 | 禁止の内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 任期満了日の6か月前〜投票日 | 候補者等の氏名または氏名が類推される事項を表示した政治活動用ポスターの選挙区内への掲示禁止 | 公選法第143条第16項・第19項 |
| 任期満了日の6か月前〜投票日 | 上記後援団体名称を表示した政治活動用ポスターの掲示禁止 | 公選法第143条第16項・第19項 |
この「任期満了6か月前」は選挙の公示・告示日ではありません。任期満了日を基準に遡って計算します。統一地方選挙などスケジュールが決まっている選挙では、この日程を事前に把握し、後援会ポスターの掲示期限を管理することが必要です。
なお、「候補者等の氏名または氏名が類推される事項を表示していないポスター」(政党名・政策のみ記載のもの等)はこの禁止の対象外です。ただし、実質的に個人の選挙運動と判断される場合は別途規制を受ける可能性があります。
選挙期間中(公示・告示日〜投票日)の政治活動規制
選挙の公示日(告示日)から投票日当日まで、政党その他の政治団体は以下の政治活動が規制されます(公選法第201条の5〜15)。
以下の規制活動(政談演説会〜ビラの頒布)は、選挙の種類ごとに別々の条文にまとめて規定されています。参議院議員通常選挙は第201条の6、衆・参の再選挙・補欠選挙は第201条の7、都道府県・指定都市議会議員選挙は第201条の8、都道府県知事・市長選挙は第201条の9。連呼行為・公共建物での頒布・候補者氏名記載の禁止は選挙種別を問わず第201条の13で規定、機関紙誌の特例は第201条の15で規定されています。
| 規制される政治活動の内容 | 一般の 政治団体 | 確認団体 (条件付き可) | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 政談演説会の開催 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 第201条の6〜9(選挙種別により異なる) |
| 街頭政談演説の開催 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 第201条の6〜9(選挙種別により異なる) |
| 政治活動用自動車(船舶)の使用 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 第201条の6〜9(選挙種別により異なる) |
| 拡声機の使用 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 第201条の6〜9(選挙種別により異なる) |
| ポスターの掲示 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 第201条の6〜9(選挙種別により異なる) |
| 立札・看板類の掲示 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 第201条の6〜9(選挙種別により異なる) |
| ビラ類の頒布 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 第201条の6〜9(選挙種別により異なる) |
| 選挙に関する報道評論を掲載した 機関紙誌の頒布または掲示 | ❌ 禁止 | ✅ 一定条件下で可 | 公選法第201条の15 |
| 連呼行為 | ❌ 禁止 | ❌ 禁止(確認団体も不可) | 公選法第201条の13 |
| 公共の建物における文書図画の頒布 | ❌ 禁止 | ❌ 禁止(確認団体も不可) | 公選法第201条の13 |
| 候補者の氏名または氏名類推事項の記載 | ❌ 禁止 | ❌ 禁止(確認団体も不可) | 公選法第201条の13 |
選挙にあたって一定数以上の候補者を擁立または支援・支持し、総務大臣もしくは選挙管理委員会から確認書の交付を受けた政党または政治団体です(参院通常選挙は第201条の6第3項、都道府県・指定都市議選は第201条の8第2項、知事・市長選は第201条の9第3項等)。確認書の交付を受けることで、表中「確認団体(条件付き可)」の活動が一定の要件のもとで認められます。
確認団体に認められる活動の主な条件
- ポスター・立札・看板類:候補者の氏名・肖像・氏名が類推される事項を表示してはならない(公選法第201条の13第1項第2号)
- ビラ類:候補者の氏名・肖像・氏名類推事項の記載禁止(公選法第201条の13第1項第2号)。頒布方法にも各選挙種別の条文(第201条の6〜9)で制限あり
- 政談演説会・街頭演説・自動車・拡声機:原則として候補者名に関連する内容の使用が制限される
- 連呼行為・公共建物での頒布・氏名類推事項記載:確認団体であっても禁止(例外なし)
確認団体であっても「候補者の氏名や氏名が類推される事項を記載すること」は禁止されています。確認団体の政治活動として行うポスターや演説会でも、個別の候補者を連想させる内容が含まれていると違反となります。この判断は難しいため、特定行政書士への事前確認が不可欠です。
選挙期間中も自由にできる政治活動
選挙期間中に規制される活動以外の政治活動は、政党・政治団体・個人を問わず原則として自由に行うことができます。
| 活動の種類 | 具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 新聞紙・雑誌への広告掲載 | 政党の政策広告、意見広告など | 選挙運動広告との混同に注意 |
| テレビ・ラジオによる政治活動 | 政党の政見・政策の紹介、討論番組への出演など | 放送法の規制は別途適用あり |
| ウェブサイト・SNSによる政治活動 | 政党・政治団体のHP更新、SNS投稿など | 候補者の氏名類推事項の記載は別途制限あり |
| 政策立案・内部研究・会議 | 政策委員会・幹部会議など(対外的発表は除く) |
ウェブサイト・SNSによる政治活動は選挙期間中も自由に実施できますが、「候補者の氏名を記載して投票を呼びかける内容」は選挙運動となるため、候補者・政党等以外が行うことは禁止されます(電子メールによる選挙運動文書の頒布は候補者・政党等のみ可)。
選挙が重なる場合の政治活動規制に注意
地方選挙は基本的にスケジュールが決まっているため、計画的な政治活動が可能です。しかし、別の選挙が同時期に実施される場合、予期しない形で政治活動が制限されることがあります。
| ケース | 注意点 | 影響 |
|---|---|---|
| 衆議院解散による総選挙と地方選挙の重複 | 総選挙が公示されると、衆院選の候補者以外の政治団体の政治活動が制限される | 地方選挙の出馬予定者の後援会活動・街頭活動等が停止を余儀なくされる |
| 知事選直後の欠員補選 | 知事選が告示された後は、補選候補者の政治活動も制限を受ける可能性がある | 補選の直前に知事選が実施される場合、知事選告示後から補選告示日まで政治活動が制限される |
| 統一地方選挙の前半・後半が重なるケース | 前半戦(都道府県議会等)と後半戦(市区町村議会等)で告示日が異なるため、前半戦告示後は後半戦候補者も制限を受けることがある | スケジュール管理が特に重要となる |
最も注意が必要なのは「衆議院の解散による突発的な総選挙」です。地方選挙の告示を間近に控えた時期に解散・総選挙の公示が重なると、地方選候補者の後援会活動・ポスター掲示・街頭活動がすべて制限されます。事前に解散リスクを想定したスケジュール管理が必要です。
重複選挙時の対応策
- 早期の政治活動着手:告示前の禁止期間に入る前に、できる限り政治活動を前倒しで実施しておく
- ポスターの事前撤去計画:解散・公示が行われた場合に速やかに撤去できる体制を整えておく
- 顧問特定行政書士による日程管理:複数の選挙スケジュールを踏まえた政治活動の可否判断を専門家に依頼する
政治活動の適法性チェックは特定行政書士へ
政治活動が「選挙運動」に該当しないか、選挙期間中の規制に違反しないかの判断は、活動の内容・時期・方法・主体によって個別に判断されます。誤った判断による選挙違反は、公民権停止・当選無効という重大な結果を招きます。
- 行政書士の独占業務:公職選挙法に準拠した各種書面を報酬を得て作成する業務は行政書士法第1条の2により行政書士の独占業務です
- 特定行政書士であること:行政不服申立代理権(行政書士法第1条の3の2)を持つ特定行政書士が、より高度な選挙法務対応が可能です
- 無資格者への依頼リスク:行政書士資格を持たない「選挙コンサルタント」「選挙プランナー」への有償依頼は行政書士法違反に加担するリスクがあります
お問い合せはコチラからどうぞ
※送信されたお名前・メールアドレス等の個人情報は、プライバシーポリシーに基づき適切に管理いたします。
