政治資金パーティーとは?法律上の根拠と注意点を政治法務専門の特定行政書士が解説

政治家や政治家後援団体が開く各種パーティー

政治の世界では様々なパーティーが開催されています。「○○君を励ます会」や「○○就任記念パーティー」などから、出版記念パーティー、モーニングセミナー、昼食会、有識者による講演会形式など規模も開催時間帯も様々です。各種選挙が近づくと、政党や政治家(政治団体)が資金集めのために政治資金パーティーを開催します。

これらのパーティーは、政治資金規正法ではどのように位置づけられているのでしょうか。政治資金パーティーを開催する際には、パーティー券に必ず記載しなければいけない文言や、開催後に政治資金収支報告書に記載すべき事項まで細かく法律で決まっています。本稿では、いわゆる「政治資金パーティー」について分かりやすく解説いたします。

政治資金パーティーとは?

「政治資金パーティー」とは、対価を徴収して行われる催物で、その収入から経費を差し引いた残額を、開催した者又はその者以外の者の政治活動(選挙運動を含む。これらの者が政治団体である場合には、その活動)のために用いるものをいいます(政治資金規正法8条の2)。

すなわち、パーティー券を1枚20,000円で販売しながら、食事は販売枚数(定員)の半分程度しか用意せず経費を圧縮して、その差額である収益を政治活動の資金に充てることを目的としたパーティーです。

したがって、上記要件を満たすものであればその名称を問わず政治資金パーティーとなります。すなわち、「励ます会」「出版記念パーティー」「勉強会」「セミナー」などであっても、上記要件を満たせば政治資金パーティーとなります。

一方で、会費を徴収して行うイベントであっても、当初より収益の上がることを予定していないものは、「残額を、開催した者又はその者以外の者の政治活動のために用いるもの」の要件を満たしません。したがって、「忘年会」「新春の集い」「○○を祝う会」等の名称や会費金額の大小を問わず、参加者が実費を負担して行われる(収益をあげて、それを政治活動のために支出することを目的としない)パーティーは政治資金パーティーには該当しません。

政治資金パーティーに該当するか否かによって法律上の扱いが異なり、具体的には政治資金収支報告書上の記載方法が異なってきます。収支に関する報告を正しく政治資金収支報告書に記載しないと、政治資金規正法違反になるので注意してください。

開催の主体に関する制限

政治資金パーティーは、原則として政治団体によって開催されるようにしなければなりません。その収支等については当該政治団体の収支報告書の中で報告します。

政治団体以外の者が「特定パーティー」(政治資金パーティーのうち、当該政治資金パーティーの対価に係る収入の金額が1,000万円以上であるもの)になると見込まれる政治資金パーティーを開催する場合には、当該「政治団体以外の者」は、当該政治資金パーティーについては、開催しようとする時から政治団体とみなされます。すなわち、届出義務、会計帳簿への記帳義務、収支報告書の提出義務が課されます。

以上の通り政治資金パーティーは政治団体が実施するのが原則ですが、政治資金規正法では政治団体以外のものが政治資金パーティーを開催することについて禁止している規定はありません。

政治資金パーティーの対価の支払に関する制限

政治資金パーティー券の購入は、政治資金パーティーへの出席対価の支払いという債務の履行としてなされているものです。したがって、政治資金パーティーへの出席を前提として購入している限りは、政治活動に関する寄附には該当しません(対価性がある)。

ただし、政治資金パーティーの適正化を図るため、以下のような規制が設けられています。

a)支払者に対する告知義務

政治資金パーティーの対価の支払を受けて開催しようとする場合、開催者は、あらかじめ、対価の支払をする者に対して、当該対価の支払が政治資金パーティーの対価の支払である旨を書面で告知しなければなりません。

なお、その書面に記載すべき文言は、「この催物は、政治資金規正法第8条の2に規定する政治資金パーティーです。」と定められています。

一般的には、政治資金パーティーの招待状や入場券に上記文言が記載されています。政治資金パーティーに参加する機会がある方は、次回参加時に確認してみてください。

b)量的制限

政治資金パーティーを開催する者は、一つの政治資金パーティーにつき、同一の者から、150万円を超えて対価の支払をうけてはなりません。また、何人も、一つの政治資金パーティーにつき、150万円を超えて対価の支払をしてはならないとされています。

c)公表義務

政治資金パーティーを開催する者は、一つの政治資金パーティーにつき、同一の者から対価の支払合計額が20万円を超えた場合には、当該対価の支払をした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払に係る収入の金額及び年月日を報告書に記載しなければいけません。

政治資金パーティー券購入代金の税法上の扱い

政治家や政党(もしくは政党支部)に政治献金をした場合には寄付金に該当し、その支出が寄附金控除の対象になる可能性があります。では、政治資金パーティーのパーティー券を購入した費用は寄附金控除の対象になるのでしょうか。

この点につき、政治資金パーティーのパーティー券を購入した費用は、政治資金パーティーの対価として支払うものであることから、寄附金には当たりません。

したがって、パーティー券を購入した費用は寄附金控除の対象にはなりません。

国税庁タックスアンサーの政治資金パーティーのパーティー券を購入した費用も参照してください。

政治資金パーティーはパーティー券販売が主目的のため,パーティー券購入者の多くは実際にパーティーへ出席しないケースが多くあります。しかし、事業に関係する知人や友人がが多く出席するなどの理由から、実際に出席したような場合には、出席分のパーティー券の代金は交際費となる可能性があります。

政治資金収支報告書作成は行政書士へ依頼を

報酬を得て政治資金収支報告書を作成できるのは行政書士だけです。行政書士でない者が報酬を得て政治資金収支報告書を作成すると行政書士法違反になります。

無資格「選挙コンサルタント」や無資格「選挙プランナー」は政治資金規正法や公職選挙法について正しい法律知識を持たず各種手続に関わっており、知らないうちに法律に違反するリスクがあります。政治資金収支報告書作成については行政書士へ御依頼ください。