この記事でわかること
- 選挙ポスターに「ユポ紙」が使われる理由と印刷リードタイムの実態
- 令和7年改正で全選挙42cm×40cmに統一されたポスター規格(個人演説会告知ポスターの廃止)
- 新設された品位保持規定(氏名記載義務・営業宣伝禁止・100万円以下の罰金)
- 告示日に間に合わせるための制作スケジュールの立て方
- 公費負担制度の活用方法と申請手続き
突然の出馬では選挙ポスターが間に合わない
選挙ポスターの制作には写真撮影・デザイン・印刷・納品まで相応の時間がかかります。この事実を象徴する出来事が2016年の東京都知事選挙です。
野党統一候補の鳥越俊太郎氏の出馬表明が告示2日前の7月12日にずれ込んだため、ポスターは告示当日(7月14日)の午前中に刷り上がりました。その後各所に配送したため、都内全域の掲示板への掲示が完了したのは翌15日になりました。
東京新聞(2016年7月17日)は「ポスターの掲示も15日になってようやく終えた。陣営のドタバタぶりがうかがえる」と報じました。
また、急ぎ印刷のためインクが完全に乾燥しておらず、貼り出し作業中に色移りが発生したとも報告されています。掲示板への貼り出しが遅れることは、有権者の目に入る機会を失うことを意味します。
統一地方選挙や参議院議員選挙のように告示日が事前に判明している選挙では、余裕あるスケジュールで準備を進めることが勝利への第一歩です。
選挙ポスターには特殊な紙「ユポ」が使われる
ユポ紙とは
一般的な紙は木材パルプを原料として製造されますが、選挙ポスターに使われる「ユポ(YUPO)」はポリプロピレン樹脂を主原料とする合成紙です。屋外掲示に求められる以下の特性から、選挙ポスター専用の用紙として広く使われています。
- 耐水性:雨・湿気に強く、屋外の掲示板で長期間掲示しても破れにくい
- 耐久性:引き裂きに強く、貼り出し・剥がし作業でも破損しにくい
- 筆記適性:表面で筆記でき、折り畳んでも自然に開くため投票用紙にも採用されている
- 発色性:インクの発色が良く、候補者の顔写真や文字を鮮明に印刷できる
ユポ紙は投票用紙にも使用されています。折りたたんでも自然に開く性質があり、投票箱での集票がしやすいという特性があります。
ユポ紙は印刷に時間がかかる
ユポ紙への印刷は、上質紙やコート紙への印刷と比べてリードタイムが長くなります。主な理由は2つです。
- 乾燥・定着に時間がかかる:合成樹脂素材のためインクが紙に浸透せず、表面での乾燥・定着に時間を要する。急ぎ納品した場合は色移りが発生することがある
- 裏面加工の工程が必要:掲示板への貼り付けのため、裏面に両面テープ加工または糊加工を施す。この工程に専用設備と日数が必要
ユポ紙+両面テープ加工の標準的な印刷リードタイムは約3〜5日です。鳥越陣営が2日間で納品にこぎつけたのは極めて例外的なケースです。
ポスター規格の統一(2025年改正・2026年1月1日施行)
選挙の種類を問わず、すべての選挙運動用ポスターの規格が「長さ42cm×幅40cm以内」に統一されました。あわせて個人演説会告知用ポスターも廃止されました(公選法第143条改正)。
| 適用選挙 | 規格(改正後) | 根拠条文 |
|---|---|---|
| すべての選挙(国政・地方を問わず) | 長さ42cm × 幅40cm以内 | 公選法第143条(令和7年法律第20号改正) |
改正の背景と主なポイント
- 全選挙で統一規格に:従来は選挙の種類によって異なっていた規格(例:市議会A3、国政選挙42×38cmまたは42×50cm)が、すべて42cm×40cm以内に統一された
- 大型ポスターの廃止:42cm×50cmの「大型ポスター(個人演説会告知用)」が廃止。これに伴い演説会告知の記載義務も消滅した
- 個人演説会告知ポスターの廃止:これまで別途認められていた個人演説会告知用ポスター(第143条第1項第4号の3)が廃止
- 適用時期:令和8年1月1日以後に公示・告示される選挙から適用(それ以前に告示された選挙は旧規定による)
| 適用選挙 | 規格(改正後) | 根拠条文 |
|---|---|---|
| すべての選挙(国政・地方を問わず) | 長さ42cm × 幅40cm以内 | 公選法第143条(令和7年法律第20号改正) |
改正の背景と主なポイント
- 全選挙で統一規格に:従来は選挙の種類によって異なっていた規格(選挙運動用ポスターは全選挙42cm×30cm以内、衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事選挙のみ個人演説会告知用ポスターとの合算で42cm×40cm以内)が、すべて42cm×40cm以内に統一された
- 大型ポスターの廃止:旧来、衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事選挙のみで認められていた「個人演説会告知用ポスター(42cm×10cm以内)」が廃止。選挙運動用ポスターとの合算枠(42cm×40cm以内)もなくなり、全選挙統一の42cm×40cm以内に一本化された
- 個人演説会告知ポスターの廃止:これまで別途認められていた個人演説会告知用ポスター(第143条第1項第4号の3)が廃止
- 適用時期:令和8年1月1日以後に公示・告示される選挙から適用(それ以前に告示された選挙は旧規定による)
改正後の規定は「42cm×40cm以内」という上限規制です。旧来の選挙運動用ポスター(42cm×30cm以内)はこの上限に収まるため引き続き使用できます。個人演説会告知用ポスター制度は廃止されましたが、42cm×40cm以内のポスターはそのまま使用可能です。
参考:旧規格(廃止)
以下は令和7年改正前の規格です。旧来の選挙運動用ポスター(42cm×30cm以内)は新規格の上限内に収まるため引き続き使用できます。参考として掲載します。
| 選挙の種類(旧) | 標準サイズ(旧) | 大型サイズ(旧) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 衆議院・参議院・都道府県知事選 | 42cm × 30cm以内 | 42cm × 10cm以内(告知部分のみ) 合算で42cm × 40cm以内 | 選挙運動用ポスター(×30cm)に告知用(×10cm)を合わせて最大×40cmが可能だった。令和7年改正で廃止 |
| 都道府県議会・市長・区長選 | 42cm × 30cm以内 | 使用不可(旧) | 大型ポスター廃止で現在は統一規格に |
| 市区町村議会議員・町村長選 | A3(29.7cm × 42cm) | 使用不可(旧) | 旧来の小サイズも42cm×40cmに統一 |
【旧規格の事例】2022年参院選 違法ポスター問題(旧制度下の教訓)
2022年参議院議員選挙では、日本維新の会公認候補(千葉選挙区)が選挙運動用ポスター(42cm×30cm)と個人演説会告知用ポスター(42cm×10cm)を合わせた大型ポスターを使用したにもかかわらず、必須だった個人演説会の告知記載を欠いたまま掲示する事案がありました。
2025年改正により個人演説会告知用ポスター制度自体が廃止されたため、この種の告知記載漏れ違反は今後は発生しません。ただし「デザイン修正を繰り返すうちに重要な記載が漏れる」というミスのパターンは依然として起こり得ます。
新設された品位保持規定(2025年改正・2025年5月2日施行)
令和7年法律第19号(令和7年5月2日施行済み):選挙掲示板ポスターに関して「氏名記載義務」「品位保持義務」「営業宣伝禁止(罰則あり)」が新設されました(公選法第144条の4の2・第235条の3第2項)。
この改正は、2024年の東京都知事選挙において他者の広告を掲載したポスターや品位を損なう内容のポスターが多数掲示されたことを契機として行われました。
| 規定の種類 | 内容 | 根拠条文・罰則 |
|---|---|---|
| 氏名記載義務 | 掲示板に掲示する選挙運動用ポスターには、候補者の氏名を選挙人に見やすいように記載しなければならない | 第144条の4の2第1項 (罰則規定なし) |
| 品位保持義務 (名誉・風俗) | 他人・他の政党の名誉を傷つける内容、善良な風俗を害する内容を記載してはならない | 第144条の4の2第2項 (直接の罰則なし※) |
| 営業宣伝禁止+罰則 | 特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をするポスターを掲示してはならない | 第235条の3第2項 100万円以下の罰金 |
各規定の詳細
① 氏名記載義務(第144条の4の2第1項)
令和7年5月2日以降に告示される選挙から、選挙掲示板に掲示するすべてのポスターに、候補者の氏名を選挙人に見やすいように記載することが義務付けられました。
- 義務の内容:候補者の氏名を見やすいように記載すること
- 直接の罰則:現時点では義務違反に対する直接の刑事罰規定はないが、選挙の適正実施の観点から遵守が必要
- 実務上の注意:氏名のフォントが小さすぎる・背景と同化して見えにくいなどは義務違反とみなされるリスクがある
② 品位保持義務(第144条の4の2第2項)
候補者は自らの責任を自覚し、以下の内容をポスターに記載してはならないとされています。
- 名誉毀損:他人または他の政党その他の政治団体の名誉を傷つける内容
- 風俗害悪:善良な風俗を害する内容
- 営業宣伝:特定の商品の広告その他営業に関する宣伝(別途罰則あり)
③ 営業宣伝に対する罰則(第235条の3第2項)
品位保持義務のうち「営業宣伝」については、独立した罰則規定が設けられています。
選挙掲示板のポスターに特定の商品広告・営業宣伝を掲載した者は、100万円以下の罰金に処せられます(公選法第235条の3第2項)。2024年都知事選で問題となった「ポスター枠を販売して他者の広告を掲載する行為」がこの罰則の対象となります。
品位保持規定は令和7年5月2日施行のため、同日以後に告示される選挙からすべて適用されます。令和7年7月の参議院議員選挙からすでに適用されています。
特定行政書士によるリーガルチェックが必要な理由
選挙ポスターのデザインは公職選挙法の各種規定に適合している必要があります。令和7年改正で規制項目が増えており、選挙法務を完全に理解しているデザイナーは存在しません。デザイナーが完成させたデザインに対して、最終入稿前に特定行政書士がリーガルチェックを実施することが不可欠です。
ポスターデザインのリーガルチェックリスト(令和7年改正対応版)
- 規格(42cm×40cm以内)に収まっているか
- 候補者の氏名が見やすい位置に記載されているか(令和7年改正・氏名記載義務)
- 他人・他の政党の名誉を傷つける表現がないか(品位保持義務)
- 善良な風俗を害する内容が含まれていないか(品位保持義務)
- 特定の商品広告・営業宣伝が含まれていないか(100万円以下の罰金対象)
- 候補者の氏名・経歴・肩書きに虚偽・誇張がないか
- ビラ・はがきとの機能混同がないか
印刷後に法規制違反が発覚した場合、刷り直し費用は全額自己負担となります。公費負担は適法に作成されたポスターにしか適用されません。リーガルチェックは必ず印刷発注前に実施してください。
当事務所では、デザイナーが仕上げたデザイン案を特定行政書士が必ずチェックしてから印刷会社へ入稿します。令和7年改正(氏名記載義務・品位保持規定)への適合確認も実施しています。
告示日に間に合わせるための制作スケジュール
選挙ポスターの制作は告示日から逆算してスケジュールを立てる必要があります。以下は標準的な工程と所要日数の目安です。
| 目安時期 | 作業内容 | 所要日数目安 | ポイント・注意事項 |
|---|---|---|---|
| 告示の 3〜4週前 | 写真撮影・選定 | 撮影1日+選定数日 | 数百枚撮影し家族・後援会メンバーで選定。他の印刷物・Webと共通して使える写真を確保する。 |
| 告示の 2〜3週前 | デザイン作成・修正 | 1〜3週間 | 他の選挙印刷物(ビラ・はがき・のぼり)とビジュアルを統一。修正を繰り返すため余裕が必要。 |
| 告示の 2〜3週前 | 特定行政書士によるリーガルチェック | 2〜3日 | サイズ・品位保持規定違反・氏名記載義務・虚偽記載等を確認。印刷後の発覚は全額自己負担での刷り直しになる。 |
| 告示の 2〜3週前 | 色校正(本機校正) | 2〜4日 | 実際の印刷色を確認し最終OKを出す。省略するとイメージと異なる仕上がりになることも。 |
| 告示の 1〜2週前 | 印刷(ユポ紙・加工) | 7〜10日 | ユポ紙+両面テープ・糊加工で通常より日数がかかる。急ぎ対応は追加費用が発生する場合あり。 |
| 告示 前日まで | 納品・配送・貼り出し準備 | 1〜3日 | 告示日の朝から全掲示板への貼り出しが完了できるよう担当者を事前に割り振っておく。 |
写真撮影からポスター納品まで余裕をもって見ると3〜4週間かかります。統一地方選挙・参院選のようにスケジュールが決まっている選挙では、出馬を決意した段階で直ちに動き始めてください。


急な解散総選挙への対応策
衆議院の解散等により急遽選挙が行われる場合、通常のリードタイムが確保できません。以下の対策を平時から講じておくことをお勧めします。弊所では、過去に3日間で総選挙ポスターを完成させた実績もございます。
- 写真・デザインの事前準備:平時から写真撮影・デザインのベース版を完成させておく
- 専門業者との関係構築:急ぎ対応が可能な選挙ポスター専門業者を事前に選定し見積りを取得しておく
- リーガルチェックの前倒し:特定行政書士と事前に連携しチェック工程を最短化できる体制を整えておく
ポスター制作費の公費負担制度を活用する
特殊用紙であるユポ紙を使用する選挙ポスターは一般の印刷物より制作コストが高くなります。ただし公職選挙法に基づく公費負担(選挙公営)制度により、制作費の一定額を国または地方公共団体が負担します。
公費負担を受けるための手続き
公費負担を受けるためには、立候補届出後に以下の手続きを行う必要があります。
- ポスター印刷業者との有償契約を締結(単価・枚数・期限を明記)
- 「ポスター作成契約届出書」および「契約書の写し」を選挙管理委員会に提出
- 「ポスター作成枚数確認申請書」を選管に提出し確認書の交付を受ける
- ポスター完成後「ポスター作成証明書」を作成し印刷業者に交付
- 印刷業者が選管に「請求書・内訳書・口座振替依頼書」等を提出
公費負担手続きの書面作成(選管提出書類)は行政書士の独占業務です(行政書士法第1条の2)。
無資格の選挙コンサル業者が報酬を得て代行することは行政書士法違反となります。必ず行政書士にご依頼ください。
選挙ポスターの制作・印刷は「選挙ポスター.biz」へ
選挙ポスターの印刷には、選挙法務の知識・ユポ紙の取り扱い実績・短納期への対応力など、一般の印刷業者にはない専門性が求められます。
令和7年改正への対応も含めて、最新規格・法規制に精通した専門業者への依頼を強くお勧めします。
- 選挙の種類別仕様・最新規格の確認
- ユポ紙・両面テープ加工に対応した専門印刷業者への発注
- 急ぎ・短納期案件の相談(解散総選挙対応)
- デザイン制作込みのワンストップ対応
- デザイン完成後の特定行政書士によるリーガルチェック(改正対応)

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