選挙に不服があるときの対処法
選挙に関して不服があるときには、訴訟に比べて簡易迅速な手続きにより有権者の権利救済を図る制度(選挙に関する不服申立て)が用意されています。このページでは、公職選挙法に規定されている不服申立て制度について、行政書士法改正の観点も含めて詳しく解説いたします。
選挙に関する不服申立て制度の概要
選挙に関連する不服申立て手続としては、「選挙の効力に関する異議の申出及び審査の申立て」(公職選挙法第202条)及び「当選の効力に関する異議の申出及び審査の申立て」(同法第206条)が挙げられます。
公職選挙法第202条(選挙の効力に関する異議申出)
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において、その選挙の効力に関し不服がある選挙人又は公職の候補者は、当該選挙の日から14日以内に、文書で当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対して異議を申し出ることができます。
前項の規定により市町村の選挙管理委員会に対して異議を申し出た場合において、その決定に不服がある者は、その決定書の交付を受けた日又は第215条の規定による告示の日から21日以内に、文書で当該都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てることができます。
(地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の効力に関する異議の申出及び審査の申立て)
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において、その選挙の効力に関し不服がある選挙人又は公職の候補者は、当該選挙の日から14日以内に、文書で当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対して異議を申し出ることができる。
2 前項の規定により市町村の選挙管理委員会に対して異議を申し出た場合において、その決定に不服がある者は、その決定書の交付を受けた日又は第二百十五条の規定による告示の日から21日以内に、文書で当該都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てることができる。
公職選挙法第202条
公職選挙法第206条(当選の効力に関する異議申出)
地方公共団体の議会の議員又は長の選挙においてその当選の効力に関し不服がある選挙人又は公職の候補者は、第101条の3第2項又は第106条第2項の規定による告示の日から14日以内に、文書で当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対して異議を申し出ることができます。
前項の規定により市町村の選挙管理委員会に対して異議を申し出た場合において、その決定に不服がある者は、その決定書の交付を受けた日又は第215条の規定による告示の日から21日以内に、文書で当該都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てることができます。
(地方公共団体の議会の議員又は長の当選の効力に関する異議の申出及び審査の申立て)
地方公共団体の議会の議員又は長の選挙においてその当選の効力に関し不服がある選挙人又は公職の候補者は、第百一条の三第二項又は第百六条第二項の規定による告示の日から14日以内に、文書で当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対して異議を申し出ることができる。
2 前項の規定により市町村の選挙管理委員会に対して異議を申し出た場合において、その決定に不服がある者は、その決定書の交付を受けた日又は第二百十五条の規定による告示の日から21日以内に、文書で当該都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てることができる。
公職選挙法第206条

極めて短い期限:14日以内の申出が必須
「選挙の効力」に関する異議申出であっても「当選の効力」に関する異議申出であっても、選挙の日または当選者が確定した日から14日以内に定められた書式で異議申出手続きを行う必要があります。
この期限は極めて厳格であり、不変期間とされています。延長や猶予は一切認められず、期限を1日でも過ぎれば、どれほど重大な違反があっても異議は却下されてしまいます。この厳格性の理由は、選挙の早期確定という政策目的にあります。当選者が速やかに職務を開始し、議会や行政が機能不全に陥るのを防ぐため、迅速な紛争解決が優先されるのです。
一般の方が直面する困難
一般の方が14日以内に規定の書式で申出書を起案して選挙管理委員会へ提出するのは非常に困難です。当事務所が対応した中では、市や区の選挙管理委員会では不服申立を受けたことがない場合も多く、選挙管理委員会自身もどのように対応してよいのか分からない、書式さえも持っていないといったケースも多くあります。そのようなケースでは、選挙管理委員会へ問い合わせをしても手続きの仕方を教えてもらえず、必要十分な申出書を期限までに出すことができません。
選挙の効力や当選の効力に疑問を感じたら、すぐに専門の特定行政書士へご相談ください。
行政書士法改正と特定行政書士制度の発展
平成26年改正:特定行政書士制度の誕生
平成26年(2014年)6月に公布された「行政書士法の一部を改正する法律」により、日本行政書士会連合会が実施する特定の研修を修了した行政書士(「特定行政書士」)は、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することを業とすることができることとされました。
この改正は、同時期の行政不服審査法改正と連動し、国民の権利利益救済のアクセス向上を目指したものです。
令和元年改正:目的規定の明確化
令和元年(2019年)12月4日に成立した改正では、行政書士法第1条に「国民の権利利益の実現に資すること」という文言が追加され、目的規定が明確化されました。
令和7年改正:使命規定への格上げと代理権の画期的拡大
令和7年(2025年)6月6日に成立し、2026年1月1日に施行される最新改正は、特定行政書士制度にとって革命的です(2026年1月施行)。
まず、行政書士法第1条が「使命規定」として明確化されました。これは単なる「目的規定」から「使命規定」への格上げであり、行政書士が国民の権利擁護を担う専門職であることが法律上より明確に位置づけられたことを意味します。行政書士は、国民と行政の架け橋として、デジタル化時代における行政手続きの支援と国民の権利実現という重要な使命を担うことが明記されました。
さらに、改正行政書士法第1条の4第1項第2号により、従来の「作成した書類」から「作成することができる書類」へと代理権の範囲が拡大されます。
この変更により、特定行政書士は自らが関与していない案件でも、行政書士が作成可能な書類に関する行政不服申立てを受任できるようになります。これは、選挙後に初めて相談を受けるケースでも対応可能になることを意味し、選挙争訟における実務的意義が飛躍的に高まります。
選挙の効力に関する異議の申出
市議会議員や市長等の選挙の効力に不服のある選挙人又は候補者は、選挙の日から14日以内に異議を申し出ることができます。
「選挙の効力」に関する不服は、選挙管理委員会が選挙の執行手続に違反していた場合など、選挙の効力自体に疑義がある場合に申し立てます。具体的には、投票日の設定ミス、投票所の運営不備、開票手続きの違反など、選挙管理委員会の執行に関する問題が対象となります。
異議申出ができる者
異議申出ができる者は、その選挙の選挙人(有権者)または公職の候補者です。これは客観訴訟(民衆訴訟)の性質を持ち、自己の法的利益の侵害を証明する必要はありません。選挙の公正性という公益を守るため、誰でも異議を申し出られる制度設計となっています。
必要な書類と記載事項
異議申出書には、申出人の氏名・住所・資格、異議の具体的理由、法的根拠、求める救済内容、証拠の概要、日付と署名が必要です。しかし実務上、多くの市町村選挙管理委員会は異議申出を受けた経験が少なく、標準的な書式や手続きマニュアルが整備されていないため、専門家の支援なしに一般市民が適切な異議申出を行うことは極めて困難です。
当選の効力に関する異議の申出
市議会議員や市長等の選挙の当選の効力に関して不服がある選挙人又は候補者は、当選人の告示の日から14日以内に異議を申し出ることができます。
「当選の効力」に関する不服は、得票数又は当選人たる資格に関しての異議がある場合等に申し立てます。この不服申立てが認められた場合には、当選について更正決定がなされ、次点の候補者が繰上げ当選することになります。
接戦の場合の実務的重要性
数票差で落選し次点になった候補者が不服を申し立てるケースがありますが、その場合には「当選の効力」に関する異議申出になります。この場合には、選挙自体の効力は争わず、票の集計数の誤りや疑問票の判定や候補者の被選挙権に関する異議申し立てとなります。
票の集計数や疑問票に関しては投票用紙を再調査し、被選挙権については住居実態を調査したりします。過去には、相模原市議会議員選挙(2015年)、葛飾区議会議員選挙(2017年)、東京都議会議員江東区選挙(1969年、500票の得票変動)など、再調査により当選者が入れ替わった事例が複数存在します。
開披再調査(開披調査)の実施
有権者からの異議の申出に対して、選挙管理委員会が投票用紙を再調査する場合があります。これを「開披再調査(開披調査)」といいます。
開披再調査では、全ての票を見ながら有効・無効の判定を行います。この際に、各陣営から代表者が出席し、各投票について自陣営の見解を選挙管理委員会に対して表明します。そのため、次点となった陣営としては自陣営に有利な主張を効果的に展開し、自陣営の得票を増やすべく対応する必要があります。
特定行政書士の役割
特定行政書士は、この開披再調査の代理人として活動できます。候補者や選挙人の代わりに現場に立ち会い、個別の投票用紙について「この票は候補者Aへの投票意思が明白」「この票は他事記載で無効」などと主張を述べることができます。これは選挙争訟における特定行政書士の重要な実務的役割の一つです。
特定行政書士へ依頼する意義
専門性の高さ
選挙に関する異議申出は準備に割ける時間が非常に短いため、公職選挙法の専門知識や過去の選挙異議申出事例についての正確な知識、および選管へ提出する書式の書面について高度な起案能力が必要です。
特定行政書士は行政手続法、行政不服審査法、公職選挙法という専門法令に精通しており、選挙管理委員会の実務慣行や判断基準も理解しています。形式不備による却下を防ぎ、法的に適格な主張を構成することができます。
具体的に提供可能な支援
特定行政書士が選挙争訟で提供できる具体的サービスは以下の通りです。
書類作成支援では、異議申出書の起案と作成、審査申立書の作成、証拠書類の整理と目録作成、意見書・理由書の作成を行います。これらの書類は法的要件を満たす必要があり、専門知識が不可欠です。
手続代理では、選挙管理委員会への書類提出代行、補正要求への対応、口頭審理における意見陳述代理、選挙管理委員会からの照会への回答が可能です。特に、開披再調査の場に代理人として出席し、個別投票用紙の有効・無効について主張することは重要な役割です。
相談・助言では、異議申出の可否と成功見込みの判断、必要な証拠の種類と収集方法の助言、期限管理(14日、21日、30日という厳格な期限の遵守)、手続きの流れと今後の見通しの説明を行います。
証拠収集支援では、開票時の立会人記録の分析、投票・開票に関する目撃証言の聴取と書面化、選挙管理委員会の過去の決定例の調査、類似事例の判例・裁決例の収集を行います。
依頼するメリット
専門性の観点では、特定行政書士は行政手続法、行政不服審査法、公職選挙法という専門法令に精通しています。選挙管理委員会の実務慣行や判断基準も理解しており、形式不備による却下を防げます。
迅速性の観点では、14日、21日という極めて短い期限内に、法的に適格な書面を準備する必要があります。一般市民が自力で公職選挙法を調べ、要件を満たす異議申出書を作成することは、時間的に極めて困難です。特定行政書士に依頼すれば、即座に適切な対応が可能となります。
選挙管理委員会の役割と構造的課題
選挙管理委員会は地方自治法第181条に基づく行政委員会であり、首長や議会から独立した合議制機関です。委員は4名で、議会が選挙により選出します。任期は4年で、「人格が高潔で、政治及び選挙に関し公正な識見を有する者」という資格要件があります。
選挙管理委員会の権限は広範です。選挙人名簿の作成・管理、投票管理者・開票管理者・選挙長などの選任、選挙の管理執行、選挙啓発活動の実施など、選挙に関する包括的権限を持ちます。争訟処理においては、異議申出の受理、事実調査、投票の再点検、決定書の作成と告示を行います。
実務上の課題
多くの市町村選挙管理委員会は、選挙争訟の経験が極めて限られています。特に小規模自治体では、委員会が設立以来一度も異議申出を受けたことがないというケースも珍しくありません。委員は非常勤の名誉職的性格が強く、法律専門家ではない一般市民が選任されることが多く、事務局職員も自治体職員の人事異動の一環で配属され、選挙法の専門知識を持たない場合が多いのです。
このため、実際に異議申出があった際、選挙管理委員会自身が手続きに不慣れで戸惑うという事態が生じます。どのような書式を求めればよいか、証拠をどう評価すればよいか、口頭意見陳述をどう運営すればよいか、といった実務的判断ができないことがあります。
また、公職選挙法は手続きの大枠を定めますが、具体的な書式、提出方法、必要書類などは各選挙管理委員会に委ねられています。このため、異議申出書の書式、証拠の提出方法などが自治体ごとに異なり、一般市民にとって極めて高い参入障壁となっています。
当事務所の実績と対応力
当事務所の代表である特定行政書士は選挙に関する異議申出や審査申立の代理人としての実績が豊富です。地方議会議員の選挙では被選挙権に関する不服申立てが多く行われていますが、当事務所では、そのような不服申立て手続までをワンストップで受任可能です。
無資格の違法選挙プランナーでは代理人は受任できません。ご注意ください。
不服申立てを検討されている方は、早急にご連絡ください。以下の画像は、当事務所の代表である特定行政書士が対応した案件が報道されたものの一部です。




異議申出は14日以内に行う必要があります。選挙後は選挙収支報告書作成や残務整理などで多忙ですが、それと同時並行で意義申出の準備を進める必要があります。
投開票が終了し次点であることが確定したら、お早めに御相談ください。