選挙ポスターの印刷には時間がかかる?選挙コンサルタント行政書士が選挙ポスターの裏話を解説

突然の出馬だと選挙ポスターが間に合わない

2016年に行われた東京都知事選挙では、野党統一候補である鳥越俊太郎氏の出馬表明が告示直前の7月12日にずれ込みました。そのため、鳥越氏の選挙ポスターは告示当日14日午前中に刷り上がり、その後各所に配送したため、掲示板に貼り出す作業は14日の夕方から開始されたようです。都内全域のポスター掲示板へ掲示が完了したのは、15日になってしまったそうです。

 鳥越さんが野党四党の都知事選統一候補に選ばれ、正式に出馬表明したのは告示二日前の十二日。このため、事務所は急ごしらえで間に合わせ、ポスターの掲示も十五日になってようやく終えた。だが、数千枚を用意した名刺サイズの選挙用チラシは告示日にほぼ配りきり、追加が思うように届かない。陣営のドタバタぶりがうかがえる。

東京新聞 2016年7月17日

選挙ポスターで使用される紙は特殊なもの

東京新聞の記事によれば、12日に選挙ポスターの印刷を開始して14日には納品されたようですので、選挙ポスターの製作としてはかなり高速です。一般的に、選挙ポスターの印刷はビラやはがきの印刷に比べて時間がかかります。

これは、選挙ポスターには「ユポ」という特殊な素材を使うからです。ユポとは、ポリプロピレン樹脂を主原料にしたもので、水に強く破れにくい合成紙です。一般的な「紙」と違って、木材などのパルプを原料とした紙ではありません。また、 筆記にも適した合成紙であり、折っても自然に開くため投票用紙にも使われています。

この「ユポ」に印刷する工程は、一般の「紙」に印刷する場合と比べて時間がかかります。また、最近の選挙ポスターは裏面に両面テープ加工やノリ加工を施すため、さらに時間がかかります。
ユポを使って、裏面にテープ加工をすると、一週間程度の期間を見込んでスケジュールを立てるのが一般的です。それに比べると、鳥越俊太郎氏の選挙ポスターが2日で納品されたのは驚異的だといえます。そのためか、貼り出し作業をしている際に、印刷が完全に乾いていなかったため色移りしたという未確認情報もあります。

選挙ポスターの手配は計画的に

2016年の都知事選や総選挙の場合には予期せず選挙に突入することがありますが、その他の選挙(統一地方選挙や参議院議員選挙等)はスケジュールが決まっています。選挙で確実に勝利するためには各工程の進捗管理が最も重要です。スケジュールには余裕を持って予定を立ててください。

選挙ポスターを作成するためには、一般的には以下の作業が必要です。

  1. ポスター用写真の撮影
  2. 使用写真の選定
  3. ポスターのデザイン
  4. ポスターデザインのチェック
  5. ポスターデザインの入稿
  6. ポスターの色校正
  7. ポスターの印刷

ポスター用写真の撮影は、パスポート用証明写真のように数枚撮影して終わりではありません。様々な表情を撮影し、緊張を解して自然な笑顔を引き出すために、数百枚は撮影するのが通常です。
そのように撮影した大量の写真の中から、選挙本番ポスターや各種印刷物・Web媒体に使用する写真を選択していきます。その際には、本人が選ぶより家族や後援会メンバーの声を尊重するケースが大半です。

使用する写真が決まったら、次はデザインを決定します。この際には、選挙本番ポスターだけを独立してデザインするのではなく、他の印刷物やWeb媒体とのイメージの統一を図ります。複数作成したデザインの中から一番良いものを選択し、印刷に回します。

いきなり全ての枚数を印刷するのではなく、印刷による色味の変化を見るために「色校正(本機校正)」を実施するケースもあります。ここで、デザイナーや候補者本人に色を確認してもらい、OKが出てから本番の印刷に取り掛かります。

選挙種別によって選挙ポスターのサイズが違う

市議会議員選挙や区議会議員選挙などでは「A3」サイズの選挙ポスターを使用します。一方で、国政選挙や知事選挙では少し大きなサイズの選挙ポスターも使用が可能です。
ただし、大きいサイズの選挙ポスターを使用するためには演説会の告知を記載しなければいけません。

この点について、2022年参議院議員選挙で記載ミスをした陣営がありました。

日本維新の会公認の参院選候補が公職選挙法に反する「違法ポスター」掲示でドタバタだ。選挙掲示板に違法ポスターを張っているのは、千葉選挙区の佐野正人候補(54)。

 選挙ポスターは告示後に指定の掲示板にだけ張ることが許されている。実はあの大きさのポスターを張るためには「個人演説会開催の告知」の掲載を公選法は義務付けている(第143条)。ところが、佐野候補のポスターには、その表記が一切ないのだ。

日刊ゲンダイデジタル 2022/07/07

選挙ポスターを始めとする各種選挙関連印刷物は、デザイナーに修正依頼を繰り返すうちに当初のデザイン案は原型を留めないほど改変されることが多くあります。しかし、デザイン修正を繰り返した場合でも、最終的には選挙法務の観点からリーガルチェックが必要です。

弊所では、デザイナーやディレクターが仕上げたデザイン案を、特定行政書士が必ず最終チェックしてから印刷会社へ入稿します。
選挙法務を全て正確に理解しているデザイナーはいませんので、注意が必要です。

選挙ポスターの制作でお困りの方は、選挙法務専門の行政書士選挙コンサルタントにご相談ください。

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ポスター制作代金は公費負担が利用可能

特殊な用紙を使用するため印刷するのに時間がかかりコストも高い選挙用ポスターですが、その制作費用は選挙管理委員会が公費で負担してくれます。ただし、公費負担を利用するためには事前に書面を作成して手続を実施する必要があります。

ポスター代金に関する公費負担手続の書面作成は行政書士選挙コンサルタントにご依頼ください。行政書士以外の者が報酬を得て公費負担申請書類を作成するのは違法です。

選挙費用は選管から補助が出る?選挙ポスターや選挙カー費用の公費負担を解説します

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